その時専務は、「社長、私に任せておいてください」と、いかにも自信たつぶりに言いきった。彼の顔つきまで変わってましたよ。経理マン独特のおとなしげな風貌から、斬った張ったの世界に生きる抜け目のない不動産業者の顔つきにね。その時ですよ、初めて私が専務に不安を抱いたのは。でも、まだ漠然とした不安でしたし、会社も儲かってましたから、不動産から手を引けとは言えなかったんです。正直なとこ受私にも欲が出てきてましたしね。後から聞いたんですが、専務はそのころから社内金融をやっていたらしいんです。社員本人はもちろん、社員の親や親戚、友人、誰からでもいいからおカネを出させる。金利は年に一八%。仮に百万円出せば、一年後には百十八万円になって戻ってくるわけですから、ほとんどの社員がこの話に乗ったようです。なかには、父親の退職金から内緒で一千万円を引きのが積もり積もって数億にはなってるでしょうね。結局、使い途がよく分からないおカネが二十億から二十五億円分もある。見てくださいよ、この領収書。名目はただ企画料と書いてあるだけで、額面は一千五百万円。しかも、手書きですよ。どこの社会に一千五百万円の領収書を手書きで切る人間がいますか。